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畳之下新聞

畳の下に敷いてある新聞には、あなたの心を惹きつける言葉が書かれています。

売れるとみんなが困る 謎の通販サイトがあった

 送料無料や即日配送など、熾烈なサービス競争や、1円単位の価格競争。

「いかに商品を売るか」毎日、いや毎秒ごとに激しい競争が行われている通販業界に、従来の常識を覆す「商品を売らない」という独自のビジネスモデルで挑む通販サイトがあらわれたのです。

 

 

とある村

ある日、商工課のあなたの元に、若手議員がやってきました。

先週、村長と議員数人で視察にいったのは聞いていたので、また新しい仕事の話でしょう。

あなたは身構えて話を聞きます。

 

どうやら、村の特産品を販売する通販サイトを始めたいようです。

 

詳しい話を聞くと、全国の先進的な自治体が集まって展開している通販サイトがあって、村長はそこに参加すると決めた様子。

ただ、村長には細かい話がさっぱりわからなかったので、若手議員が動くことになったとの事。

 

費用面では、初期費用が200万円かかるものの、それ以降は毎月15万円ですむようです。

まぁ、この規模の金額であれば、商工費の予算内でなんとかやりくりできる範囲だし、毎月の費用は固定なので議会を通すのも難しくなさそうです。

すでに始めている自治体は、スタート時には、大々的に記者会見を開いているから、うちの村でもやるべきだとのこと。

確かに、新聞やテレビで流れば、市民に対して、仕事ぶりを盛大にアピールできるでしょう。

 

ひと通り話し終わると、若手議員は、その通販サイトで買ったという何かの肉をお土産だと渡して、帰って行きました。

「視察に行ったお土産を通販サイトで買う」という行為は、全く意味がわかりませんが、深く考えないことにしました。

 

正直、ネット販売の知識はゼロですが、村にはいくつかネット販売をやっているお店があるので、そこに相談すればなんとかなるでしょう。

本格的に売れ始めると、自分の仕事が増えてしまって困る気はしますが、売れるイメージもわきません。

売れなくても、費用は15万円ですし、議会で費用対効果を問われた時には、全国に宣伝できて、広告効果が高いと説明すればいいでしょう。

来年には村長選が控えています。この任期中にはこれといって大きな実績はなかったですから、このプロジェクトは失敗できません。

 

村の商店

ある日、あなたのお店にやって来た村役場の職員は自慢気にこう言います。

「あなたのお店の商品を出品しましょう。手数料無料ですよ。」

あなたは、すでに大手モールや自社サイトで自慢の商品を販売していますが、村が始める通販サイトにその商品を出品してほしいようです。

地元に埋もれた良い商品をアピールするのがコンセプトなので、その職員は村中を探し回ったようですが、結局「良い商品を持っているけど、全くネット販売をやっていない」というお店を見つけることはできず、あなたのお店にやってきたという事のようです。

 

とりあえず詳しく話を聞いてみると、以下のような条件でした。

「月額の固定費用は一切不要で、商品が売れた時だけ手数料を支払う」

「支払いは月締めで、配送費と販売手数料を差し引いた金額が振り込まれる」

 

無料と言いながら、売れたら手数料はかかるし、売上回収までのサイトも長いので*1、正直条件はよくありません。

また、運送会社とはすでに格安料金で契約しているので、別ルートの契約があることがバレると説明が面倒です。

力を入れて、中途半端に売れても困る事ばかりであまりいいことはなさそうです。

村役場の職員にそのことを話しても、どうやらよく分かってないようです。

 

とはいえ、全く売れなくても、金銭的な負担があるわけではありません。

せっかく、村役場の職員が頭を下げてお願いしにきたのですから、ここはとりあえず出品しておくのが経営者として当然の判断でしょう。あとで何かいいことがあるかもしれません。

こうしてあなたは、大手モールと自社サイトで販売している商品に、手数料と送料分と回収までの金利分をのせて、価格を設定します。

最終的に倍ぐらいの価格設定になってしまいましたが、売れても売れなくても損はしないので、まぁいいでしょう。

 

通販サイト運営会社

おや、久しぶりに注文が入ってきたようですね。

注文が入ったら、出品者にFaxを送り、運送会社に集荷の手配をする必要がありますが、入ってくる注文は月に数件ですから、Webデザイナーに手処理でやってもらっています。

件数が増えて片手間ではやれないようになると、専任の人間を置くとかシステム化とか、いろいろ考える必要が出てくるので困りますし、出品者も欲が出てきて、やれ手数料を減らせとかもっと集客しろとか言いだすでしょうが、注文が増える様子もないので、まだまだ大丈夫でしょう。

まぁ、売れても手数料は数百円ですから、専任を置くなんてそもそも無理なんですけどね。

 

今月もまた新しい自治体が参加することになりました。

最初に始めた市役所の職員が、視察に来た自治体をどんどん勧誘してくれるから、参加自治体は右肩上がりに増えていきます。

これで60自治体になり、1自治体あたり毎月15万円ですから、毎月900万円、我が社はこのビジネスで年間1億の売上です。

10倍の600自治体までいけば、開始時に掲げた年商10億のビジネスになります。

そこまではいかなくても、100自治体くらいまでは行くといいなー。

 

先進的自治体の市長

Amazon楽天に次ぐ、通販の第3極として、年商10億の目標を掲げてスタートした自治体通販は、

ついに今月、年商1億を達成しました!

 

 

続 売れるとみんなが困る 謎の通販サイトがあった に続くよ

 

*1:2014.1.5追記 : NP社や楽天など回収代行の場合は5日~10日後入金、Amazon.co.jpは14日毎に締めてその1週間程入金、クレジット払いの場合は各社の締め日から1ヶ月以内の入金です。この通販サイトは最長で売上75日後入金です。「無知な上に、嘘を塗り固めているようで、相当タチが悪い...」とFacebookで言ってる人がいたので、無知なその人のために追記してあげましたよ。