畳之下新聞

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「高い授業料だった」武雄市発自治体通販脱退の三島市長

楽天Amazonにつづく通販第3極」「地域所得の向上」をうたい文句に、佐賀県武雄市が始めた自治体運営型通販サイトは、開始から3年目を迎えようとしています。

2014年10月1日にはYahoo!ショッピングへの全面移転し、サイト名も変更されています。


平素より「JAPANsg」をご利用いただき、誠にありがとうございます。
この度、「JAPANsg」はサイト名称を「自治体特選ストア」へ変更し、Yahoo!ショッピングへ移転しました。
http://japan-sg.jp/

 

この自治体通販サイトは、開始から約3年間で、名前を変え、場所を変え、現在ではまったく別物になっています。

 

 

 

2011年11月 F&B良品TAKEO オープン Facebook上に通販サイト開設
(時期不明) F&B良品 から FB良品 へいつのまにか名称変更
2012年12月 Facebook から Makeshop にサイトを移転
2013年9月 FB良品 から Japan satisfaction guaranteed に名称変更
2014年1月 Yahoo!ショッピング にサイトを開設
2014年10月 Japan satisfaction guaranteed から 自治体特選ストア に名称変更
Yahoo!ショッピング全面移転

 

この通販サイトに参加しているのは小規模な地方自治体と、自前で通販サイトを運営できない中小零細企業です。
半年単位で大きな変更が続くと、その情報をキャッチアップし、ついていくだけでも大変であろうことは容易に想像できます。

 

そんな中、この自治体通販サイトから脱退する自治体が出ています。

参加1年で脱退した三島市 

三島市は、2013年8月からこの自治体通販に参加していましたが、2014年9月末で脱退し、通販サイトも閉鎖しました。

三島市自治体運営型ネット通販サービス「三島sg」を10月で閉鎖することを決めた。売り上げが低迷し、今後も増加が見込めないと判断した。
三島sgのサイトは「FB良品みしま」として昨年8月開設。「みしまコロッケ」や「みしま風鈴」など、市の特産品をネットで販売してきた。県内初の試みで、開設の記念式典には同サービスの発起人である佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長も駆け付けた。
 途中、名称が変更。昨年12月には売り上げが10万円を超えたが、その後は低迷し、1万円ほどの月もあった。同サイトの運営には三島sgへの委託費が月15万円、ホームページ運営会社への委託費が月7万5千円かかり、赤字が続いていた。
 市の予算額は2013年度350万円、本年度200万円。市の担当者は「高齢者に認知されず、贈り物に通販が使われにくいという面もあった。今後、特産品の拡販に向け、新たな策を検討したい」としている。

ネット通販「三島sg」 売り上げ低迷、10月閉鎖
http://www.at-s.com/news/detail/1174123668.html

 

市の議会答弁からは、参加に至った経緯と、苦しい運営実態が明らかになりました。

 

まず三島sgなんですが、本事業は平成24年10月に三島市で開催された、佐賀県武雄市の樋渡市長の講演会を聞く機会を得た、経済界からの要望によりスタートいたしました。
自治体が、地元商品にお墨付きを与えることで消費者に安心感を与え、インターネットを通じ販売することで、三島の特産品の売上増、自治体の知名度やイメージアップにつながると期待したところでございます。

すでに、新聞報道でご承知の通り、サイト閉鎖までの経緯につきましては、7月11日に、全国JAPANsg運営協議会幹事会が開催されました。そこで、FBホールディングス企業連合の構成員であり、ブランド名の権利をもっている「S社」も、8月31日付けで脱退することが正式に発表されました。
このことは、JAPANsg、三島市においては三島sgという呼称を12月末までしか使用できず、新たなブランド名に変更しなくてはいけないことと、なったということになります。
FB良品からJAPANsg、さらに新たなブランド名へと、ここ1年程で3度も変わるということは、消費者からの信頼を失いかねない状況にあります。
これらをふまえ、7月22日に三島市と三島商工会議所、JA三島函南三島市観光協会で構成する、FB良品三島協議会を開催した結果、依然として思うような売上やサイトへのアクセス数も伸び悩んでいることから、FBホールディングス企業連合との契約解除を決定し、7月28日付けで代表構成員である「C社」に対し、契約解除の申し出を通知し、ショッピングサイトを9月30日で閉鎖することを決定いたしました。

(中略)

各事業者の協力により67品の三島らしいプレミアム商品を発掘することができました。
しかしながら、こうした商品も、平成26年8月末までで591,526円、月平均45,502円と、月々にかかる費用を大きく下回る売上になってしまいました。
また、本サイトへのアクセス数につきましても、月平均2,800と、三島市のホームページのアクセス数の20分の1という結果になっております。

いずれの数字も、本事業における当初の見込みを大幅に下回る結果となっております。
これらのことから得た教訓として言わせていただきますが、FBにしろsgにしろ、全国的なPRや認知に結びついていなく、いかに通販サイトに誘導するかは、参加市町が全体で主体的に考えるべきではなかったのかなと思います。
第二に、格安商品や数多くの商品が大手のサイトにはあふれております。その中で魅力的な商品として購入していただくには、いわゆるブランド力や話題性がなければ難しいと判断しております。

三島市役所 平成26年9月定例会 一般質問 議会中継映像より書き起こし
http://www.discussvision.net/mishimasi/

1年間の売上が591,526円ですから、そこから得られる利益はお茶代にもなりません。
また、アクセス数も、単位は不明ですが月平均2,800とのことなので、UUでもPVだとしても、このblogのほうがよっぽど多いので、三島市知名度アップも期待できません。

三島市がこの事業に投じた税金は、約550万円との事です。
市長は「高い授業料」だったと答弁しています。

SGにつきましては、変化の激しい時代でございましたので、高い授業料を払うといったようなことになりましたけれども、これを糧として、更に一層、三島のいいものをたくさん全国の方々に買っていただくような事も、真剣に協議会として考えていきたいと思っております。
三島市役所 平成26年9月定例会 一般質問 議会中継映像より書き起こし
http://www.discussvision.net/mishimasi/

 

使ってしまった税金はもう返ってきませんが、出血が大きくならないうちに脱退を決断したことは高く評価できるでしょう。
その反面、「武雄市長の講演会を聞いたから」という安易な理由で、税金による事業を市役所に持ち込んだ「地元経済界」*1猛省すべきでしょう。

  

反省しない。 (中経出版)

反省しない。

 

 

ちなみに、関連質問への答弁によると、三島市がこの事業で発掘した地元商品は、ふるさと納税のお礼として活用する方向との事です。
私が以前blogで提案していた 「自治体通販からは脱退し、今まで支払っていた運営費と同額の毎月15万円分、役所が地元事業者の商品を直接購入する」 に近い結果となり、勝手に満足しています。

 

*1:事業のきっかけとなった武雄市長講演会の運営に関わった人物が、本事業で全体コーディネートや写真撮影などの業務を三島市から受託していたことがわかっています。