(この記事は、鎌倉市さんからお手紙ついた。武雄市さんたら読まずに食べた。の続きです)
しかたがないのでお手紙書いた
鎌倉市は、武雄市に対して2度にわたり文書による照会を行っていましたが、ようやく回答がありました。
鎌倉市が武雄市に照会していたのは以下の4点でした。
10月21日付の照会
11月5日付の照会
- 企業連合の各構成員の出資比率及び損益分配の割合がわかる文書の提示
- 損益分配をしないという武雄市と企業連合との取り交わし書の提示
11月12日付で武雄市から得られた回答は以下のとおりです。
- 企業連合の各構成員の出資比率及び損益分配の割合がわかる文書については存在しない
- 武雄市は企業連合に労務を出資している
- 平成25年度終了時をもって出資比率を算出し、損益の分配を行い、分配金を受けることとしているので、損益分配をしないという取り交わし書は存在しない
- 構成員相互で「平成25年度の成果・実績に基づき利益の分配を出資比率により勘案する」ことと「損失分担について、武雄市は金銭的な債務を負わない」ことを申し合わせている
- 平成24年度に企業連合が受託した業務に関する武雄市への分配金の有無については、まだ分配を受けておらず、協議中である。
- 消費税の取り扱いについては、適正に処理をする。
鎌倉市は、企業連合に対しても、以下の2点を照会していました。
- 企業連合の各構成員の出資比率及び損益分配の割合がわかる文書の提示
- 損益分配をしないという武雄市と企業連合との取り交わし書の提示
企業連合からの回答は以下の通りです。
- 企業連合の各構成員の出資比率及び損益分配の割合がわかる文書はない
- 損益分配をしないという武雄市と企業連合との取り交わし書はない
- 事業全体の出資比率及び損益分配比率については、協議中である。そのため、鎌倉市からの受託業務においては、武雄市の担当役務は見込まれないため、武雄市への損益分配は予定していないと前回は回答した。
- 構成員相互で「平成25年度の成果・実績に基づき利益の分配を出資比率により勘案する」ことと「損失分担について、武雄市は金銭的な債務を負わない」ことを申し合わせている
- 事業全体の出資比率及び損益分配比率が確定した時点では、武雄市が利益分配を受ける見込みがあるため、その時点で消費税は適正な処理を行う。
質問書と回答書の原文は、鎌倉市議会 中澤議員のblogでご覧ください。
さっきの手紙の回答はなーに?
そもそもの発端は、鎌倉市の通販サイトが、国の緊急雇用創出事業として行われることです。
緊急雇用創出事業においては、消費税免税事業者と契約する場合に、消費税相当額を支払うことは不適切な支出*1であるとされています。地方自治体は消費税を納税しないため、鎌倉市が企業連合に支払う委託費の内、武雄市に分配される分について、消費税相当額を減額しなくてはいけないわけです。
しかし、鎌倉市は企業連合との間で、消費税を含めた金額で契約しています。
鎌倉市の担当者は「武雄市は分配を受けない旨の回答を口頭で得ている」と答弁していました。
また、企業連合の代表構成員も、鎌倉市からの照会に対し「武雄市への分配は予定していない」と文書で回答していました。
武雄市に対する分配が無いのであれば、消費税分の減額を考慮する必要はなく、契約も適正であることになります。鎌倉市は、武雄市への分配が行われないことを文書で確認しておけばいいわけです。
ところが、11月12日付で得られた回答は、先に述べたとおり、全く違うものでした。
武雄市と企業連合からの回答を要約するとこうなります。
- 出資比率はまだ決めていないので、文書はない。
- 損益分配比率はまだ決めていないが、決定時点で武雄市は分配金を受け取る予定なので、損益分配をしないという文書はない。
- 武雄市は、利益配分を受けるが、金銭的な債務は負わないことを申し合わせている。
- 消費税は適正に処理する。
F&Bホールディングス企業連合は、民法上の組合-いわゆる任意組合であるとのことなので、損益分配に関する定めがない場合には、出資比率に応じて分配されます。
鎌倉市が行った契約の正当性を担保するには、契約日時点における、損益分配に関する定め、あるいは出資比率が明らかになっていなくてはいけませんが、そのどちらも存在しないというわけです。
鎌倉市のロジックは、土台から崩れてしまいました。
集めた税金はドコへ行く?
さて、鎌倉市への回答で、F&Bホールディングス企業連合の利益分配は、現時点では行われていないということが分かりましたが、分配されていないのは、どの程度の金額になるのでしょうか?
各自治体毎に若干異なりますが、各自治体とF&Bホールディングス企業連合との標準的な契約金額は以下の通りです。
初期費用:168万円(税込)
月額費用:15万7500円(税込)
月額の運用費用が15万7500円ですから、年間では約188万4000円になります。
現在の契約先は16あるので、F&Bホールディングス企業連合の推定年間売上は 最低でも約3,000万円になります。
これを、仮に企業連合に参加する3者で均等に分配した場合は年間1000万円、武雄市を除く2者で分配した場合は年間1500万円となります。
武雄市以外の構成員である民間企業2社の、直近の売上高*2は、それぞれ4000万円と1100万円ですから、年間1000万円以上の売上が加わることで、経営に与える影響は決して小さくないはずです。しかし、利益分配は来年3月まで行われないようです。
年間3000万円の売上は、各自治体から集められた税金ですが、これが最終的にどう分配されるのかは、結局不透明なままです。
鎌倉市さんからお手紙ついた、武雄市さんたら読まずに食べた(2周目)
鎌倉市議会の中澤議員のtwitterによれば、鎌倉市は、引き続き出資比率の回答を求め続けているものの、いまだ回答を得られていないようです。
鎌倉市政策創造担当部次長が、自治体運営型通販サイトについて、現状報告に来ました。「何とか出資比率を出してくれるようお願いしていますが、まだ来ません」と、まだ言っていましたが、民法上の任意組合が構成された時点で、すぐに鎌倉市は契約。あるはず。「何とか開始したい」。だめ。消費税です。
— 中沢 克之 (自民党鎌倉市会議員) (@nakazawajimusho) 2013, 11月 27
武雄市への分配を行わないとしていた回答が、数週間後には配分を行うと覆された時点で、鎌倉市はハシゴを外されたと考えたほうがいいのでしょう。
この通販サイトに関しては、これ以外にも、武雄市で住民訴訟が提起されていること、担当部署が一度断ったにも関わらず別部署で随意契約を行ったことなど、解決すべき課題がまだあります。
鎌倉市は、この契約を本当にすすめるべきなのか。それが鎌倉市民の利益につながるのか。
もう一度しっかり考える必要があるのではないでしょうか。
鎌倉市の通販サイトは、いまだオープン出来ていません。
議論は12月議会に持ち越されることとなりました。
*1:武雄市発自治体通販の実態が鎌倉市議会で解明されはじめるに詳しく記載しています。
*2:調査会社調べ