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畳之下新聞

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武雄市発自治体通販の実態が鎌倉市議会で解明されはじめる

ネットの出来事 いざキャバクラ 武雄市発自治体通販サイト

 

2013年10月18日午後に開かれた、鎌倉市議会の総務常任委員会協議会。

委員からの質問に市が答弁できない場面が続き、中断を繰り返した末、延会に。議題となったのは、鎌倉市の「自治体運営型通信販売サイト構築運営事業」です。

 

訴訟:鎌倉市、契約業者を巡りトラブル 名産ネット販売に影響も /神奈川

毎日新聞 2013年10月09日 地方版

 鎌倉市が鎌倉の名産品をインターネット販売する事業で、業務委託先を巡って住民訴訟が起こされていることが分かった。委託先の事業者は佐賀県武雄市などが発足させたが、判決によっては事業展開に影響も出かねず、市は「情報収集に努める」という。市議会総務常任委員会の中沢克之委員長は8日、市に説明を申し入れた。

  鎌倉市は、ホームページやフェイスブックを利用して市の特産品をアピールする通信販売サイトを開設するため9月9日、企業連合と約720万円で業務委託契約を結んだ。市は「自治体が運営するので出店料やシステム費用がかからない」として今月31日のサイト開設を目指している。

http://mainichi.jp/area/kanagawa/news/20131009ddlk14040221000c.html

 

 

鎌倉市は住民訴訟とは無関係の立場

この日行なわれた説明から、武雄市で起こされた住民訴訟に対する、鎌倉市のスタンスが明らかになりました。

鎌倉市の担当者は、「今回住民訴訟の対象となっている協定書は、鎌倉市が契約する前の協定書であり構成員も異なることから、直接影響しないもので、鎌倉市の契約先とは別の企業連合である」と説明しました。

確かに、鎌倉市とF&Bホールディングス企業連合は、2013年9月9日に契約を締結しています。

その1週間前の2013年9月2日に、企業連合の構成員の民間企業1社が入れ替わったことから、企業連合の協定書が締結し直されており、今回住民訴訟の対象となっている部分も「誤解を招く」という理由ですべて削除されています。

 

それを踏まえた上で、委員からの

「鎌倉市としては、違法性が問われている企業連合であっても、履行されれば問題ないと考えているか」

という問いに対して、

「住民訴訟の行方は見守るものの、鎌倉市としては契約が履行されるかどうかが重要と考えている。また、法令を遵守することが契約条項に盛り込まれており、仮に違法となれば市は契約を解除でき、損害賠償も請求できる」

と回答しました。

 

鎌倉市の松尾市長も、自身のFacebookに、ほぼ同じ趣旨の投稿を行っています。

今回の事案は、本市が契約を締結した後のことで、現時点では、武雄市に対し住民訴訟が提起されたという報道がされている段階です(武雄市も訴状を確認できていない状況の様です)。このため、本市の対応としては、契約に基づき、魅力的なサイトとなるよう準備に注力してまいります。

もちろん、契約先の企業連合へ情報提供を求めるとともに、他の実施自治体の情報なども収集し、しっかりと経過を見守り、必要な対応をとっていきたいと考えています。

市として最も重要なのは、この事業を進めていくことであり、当然のことではありますが、契約書には、これを担保するための条項を設けています。

 武雄市の住民訴訟と、鎌倉市の契約は関係無く、事業は進めていくというスタンスであることが改めて明らかになったわけです。

 

地方自治体の「緊急雇用基金事業」を地方自治体が受託?

鎌倉市には、今回の事業が「緊急雇用基金事業」として行われるというもう一つの争点があります。

地域の雇用失業情勢が厳しい中で、離職した失業者等の雇用機会を創出するため、各都道府県に基金を造成し、各都道府県及び市区町村において、地域の実情や創意工夫に基づき、雇用の受け皿を創り出す事業を行っています。

緊急雇用事業 : 離職を余儀なくされた失業者等の一時的な雇用・就業機会を創ります。

厚生労働省 雇用創出の基金による事業

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/chiiki-koyou3/index.html

 

この事業は、失業者に対し一時的な雇用を提供するための国の施策で、各県への交付金で基金を作り、その基金で自治体が雇用を創出するものです。

鎌倉市では、この基金を利用した「自治体運営型通信販売サイト構築運営事業」として、F&Bホールディングス企業連合へ業務を委託するわけです。

 

雇用創出の基金による事業は、その全額が国の交付金であることから、現在失業者している人を雇用することや、委託費の中から人件費にあてる費用の比率など、国が定めた様々な条件があります。

しかし、実際には失業者が雇用されていなかったり、事業以外に資金が流用されていたりと、委託先の杜撰な運用も指摘されていて、費用取り戻しや損害賠償請求だけでく、委託先が破産するなどの事例も全国で発生しています。

 

ところで、鎌倉市の委託先となるF&Bホールディングス企業連合は、武雄市と民間企業2社とで構成されています。

この企業連合は法人格をもたないため、いわゆる任意組合にあたります。

鎌倉市も任意組合であると認識していますし、鎌倉市以外の自治体との契約も、代表構成員として民間企業の1社が行っています。

このような契約形態は、国や地方公共団体との契約では一般的で、公共工事でJV(共同企業体)を構成して事業を請け負うケースがよく知られているところです。

一見、鎌倉市とF&Bホールディングス企業連合との契約も、地方自治体とJVとの契約のように見えますが、そこには大きな違いがあります。

それは、企業連合の構成員に地方自治体である武雄市が含まれている点です。

 

鎌倉市議会の総務常任委員会協議会に話を戻すと、F&Bホールディングス企業連合に対する「緊急雇用基金事業」の契約について、重大な指摘がありました。

 

2012年3月に厚生労働省から各都道府県へ通知された内容によると、緊急雇用基金事業の受託者が消費税の免税事業者である場合には、消費税分を支払うことは不適切な支出であるとされています。これは、会計検査院から受けた指摘に基づくものであり、返納を求められることも考えられるとも記されています。

委託費として支払われる消費税分は、受託者である事業者が納税するために支払われるものであり、受託者が免税事業者である場合には、そもそも支払う必要がないことから、免税事業者に対して消費税分を上乗せして委託費を支払うことについては、会計検査院から不適正な支出として指摘され、当該支出を基金に返納させる措置を求められることも考えられます。

雇用創出基金事業における消費税の取扱いについて(厚生労働省職業安定局 職地発0328第1号)

 

消費税の基本的な仕組みを説明すると、消費税の納税義務は事業者が負っています。

私達がパン屋さんで払った消費税は、パン屋さんが仕入の際に払った消費税を差し引いた上で、パン屋さんが納税しているわけです。

 

さて、鎌倉市とF&Bホールディングス企業連合との契約の場合はどうかというと、F&Bホールディングス企業連合が任意組合であった場合、消費税の納税義務はなく、企業組合を構成する武雄市と民間企業2社に消費税の納税義務*1があります。

鎌倉市が支払った委託費は、企業連合が定めた比率で、武雄市と民間企業2社で分配されますので、その分配された金額に応じて3者が消費税を納税するというわけです。

 

ところが、ここで問題が出てきます。

地方公共団体が行う取引*2にも消費税は課税されますが、地方公共団体は消費税を納税しません。

今回のケースでも、武雄市に分配される委託費には消費税が課税されるものの、その消費税を武雄市は国に納税しないため、厚生労働省からの通達によれば不適切な支出にあたる*3と判断されるわけです。

そのため、鎌倉市は、全体の委託費のうち、武雄市に分配される金額を明確にした上で、その金額にかかる消費税分を減額しなくてはいけないことになります。

 

鎌倉市の答弁によれば、「武雄市は分配を受けていない」という口頭での回答を得ており、武雄市の分配分はないため消費税を支払って問題ないと解釈しているとの事です。これに対し、委員は「武雄市が分配を受けていないことを示している資料」の提出を求めています。

 

仮に鎌倉市の答弁通りF&Bホールディングス企業連合において、武雄市はなんら分配を受けない構成員であるとすれば、何を目的に企業連合に参加し業務を分担しているのかが分かりません。

 

また、武雄市長は住民訴訟の対象となっている協定書について、債務保証をしていたが、協定書を結び直した時点で削除したと答弁しています。

法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律。これは昭和21年にできた古い法律ではあるんですけども、武雄市が債務保証をしてるんじゃないかと。これは違法行為・脱法行為じゃないかっていう事をご指摘をたまわっていますので、運営協議会の中でも整理をしましたので、元々FB 良品の協議会の中でも、この規定は入れております。債務保証については、入れておるんですけれども、(中略) 確かに、FB 良品ホールディングのときは債務保証には入っておったんですけれども、今回の9月になってからの契約、SG の協定書には、そういった誤解を招くような文言は削除しております。これは念には念を入れてであります。今まで、脱法行為とか違法行為をしていたのではなくて、(中略) 私どもの誤解があってはいけないので、丁寧に説明する意味も含めて、今回債務保証の文言というのは切り離して削除をしている次第であります。

2013年9月9日 武雄市議会 一般質問 での武雄市長答弁 18分5秒より

http://www.ustream.tv/recorded/38489915

 

これらを総合すると、F&Bホールディングス企業連合において、武雄市は「なんら分配を受けないが債務保証はする構成員」であるということになってしまいます。

 

鎌倉市はすでに契約を締結しています。また、他の参加自治体とは異なり、武雄市の住民訴訟の対象にもなっていません。

鎌倉市と市議会は、F&Bホールディングス企業連合の実態を、自ら把握することが必要となるでしょう。

延会となった総務常任委員会協議会は、週明けの10月22日に開かれる予定です。

 

なぜ任意組合としたか

そもそも、任意組合との契約や緊急雇用基金事業は、地方自治体にとって特別なものではありません。

であるにもかかわらず、ややこしい話になっているのは、地方自治体である武雄市が構成員として名を連ねているのが原因です。

企業連合が民間企業2社で構成されていればまったく問題ありません*4し、住民訴訟にもなりません。

地方自治体が民間企業と連携するには、業務委託や第三セクター、指定管理者制度などのスキームが準備されています。

しかし、多くの実績があるこれらの仕組みを選ばず、武雄市自らが任意組合の構成員となる方式を選んだのはなぜか。

その理由を明らかにすることが、この問題を解き明かす鍵となるでしょう。

 

続きます

*1:パススルー課税と呼ばれます。

*2:細かい規定がありますがここでは割愛します。

*3:武雄市だけでなく民間企業2社が免税事業者であった場合にはその分も当然対象となります。

*4:もちろん、入札や公募など適切な選定が行われる前提です。