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畳之下新聞

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佐賀県知事選とネット選挙(中) 違和感を解き明かす~ネットで政治は動かない

気になる情報 ネットの出来事 武雄市図書館 プライバシー

この記事は以下のエントリの続きです。まだお読みで無い方は、先に(上)からお読みください。
佐賀県知事選とネット選挙(上) 違和感が人を集めた~ひまじんうんことYahoo!ブリーフケース - 高圧☆洗浄機

武雄クラスタの広がり

武雄市周辺では、facebook完全移行や図書館へのTポイントカードカード導入の他にも、続々と新たな出来事が起こり続けました。

  • 武雄市図書館に保存された郷土資料を破棄
  • 図書館に併設されていた歴史資料館を閉鎖しTSUTAYAのレンタルコーナーへ
  • 名前と運営体制が変わり続ける自治体通販サイト
  • 小学校へのタブレット導入と小1からのプログラミング学習
  • 県外の塾と連携する官民一体型学校

そして、同じように「違和感」を感じた人々が、武雄クラスタへと集まってきます。

気付けば、Web、自治体IT、セキュリティ、図書館、地域活性化、歴史研究者、EC、プログラミング、ガジェット、教育、塾、法律と、広範囲の専門家が集まる集団になっていました。

そして、それぞれが感じた「違和感」の正体は何なのか、解き明かす作業が始まりました。

情報を集める

まず、報道発表や記者会見、講演などで、樋渡氏と武雄市がどのような情報を発信しているのか、情報を集める事からはじまりました。

情報を集める対象は、ネットだけにはとどまらず、テレビや新聞雑誌などのメディアや、市長の著書や講演会など、足を使った調査を含む、幅広いものとなりました。

ネット上にあるデータは大量で作業は難航を極めましたが、ツイートひとつまで、データとして整理蓄積されていきました。
消えやすいインターネット上のデータを、アーカイブするためのツールも開発されるなど、効率化も図られました。

即吊☆キャプチャー

情報を集めていくうちに、発表されている情報そのものが現実的でなかったり、話すたびに数値や事実関係が大きく変わっていたりすることが分かってきました。

たとえば、武雄市がホームページをFacebookに移行したところ、アクセス数が大幅に増えたという実績があります。
この増えたというアクセス数ひとつとっても、「5万/年が48億7千万に増加」だったり、「月間約5万が月間約300万」だったりと、資料や発言者、発言のタイミングによって、桁違いにブレているのです。

情報を集め、議論していくうちに、一つの事に気づきはじめます。
それは「発表されている内容と事実との大きな乖離が隠されている」のではないかということです。

事実をつかむ

事実を把握すれば、何が正しいのかを判断することができます。
そこで、検証に使う情報は、可能な限り各自治体の情報公開制度を利用して行政文書を取り寄せ、正確な情報を入手するようになりました。

しかし、自治体への情報公開請求は匿名で行うことはできません。また開示には手数料や郵送費などの費用もかかります。
特に、武雄市へ情報公開請求を行うことは、ネットの人格と一般市民である自分の情報を、自ら紐付ける行為になってしまいます。

実は、私達は、武雄市の問題を追いかけるうちに、実名で否定的な意見を表明した一般人が、数時間後にblogを削除したり、突然twitterを辞めたりするという場面を、何度となく目の当たりにしてきました。
ネット越しであっても、現実世界で何かが起きている事は、みんなわかっていました。

それを見てきたにも関わらず、実名を明かし決して少なくは無い費用を自ら負担して、武雄市等への情報公開請求を行う人が複数現れました。

@todotantanによる「たけお問題」関係の開示請求一覧
Index of /~kei/TakeoReferences

この方々の尽力により、「発表されている内容と現実との大きな乖離」を正確に検証できる、大量の材料が蓄積されました。
しかし、身分を明かして武雄市周辺にアクセスした事がきっかけになり、その後の活動を休止した人もいました。

私は武雄市の樋渡市長から「これ以上意見をするとネットにお前の名前を晒す」という脅迫を受けているようです: さまよう金の髭

事実検証へ

樋渡氏や武雄市が発表している内容と、行政文書に残された内容との検証が始まりました。

武雄クラスタは、それぞれ自分の知識と経験を活かせる範囲で、動きました。
ある人は、矛盾点を指摘し、ある人は法的な不備を見つけ、ある人はそれをまとめてblogにしました。

武雄クラスタは、自然に集まってきた人たちで、何らかの組織を構成しているわけではありません。
実際に面識がない人のほうが多いでしょうし、どのアカウントが武雄クラスタなのか、全体はだれも把握していません。
twitterのハッシュタグやtogetter、blogなどを通じて情報交換し、検証を進めることで、情報が蓄積されていきました。

こうして、それぞれが感じた「違和感」が、ネットの至る所に書き残されていきました。

そして、2年以上にわたり、この武雄クラスタの活動は続きます。
発見された矛盾点や疑惑には、裁判や刑事告発へとつながったものもあります。

ネットとリアルの間で

2014年4月、武雄クラスタに一つの節目がやって来ます。
任期満了に伴う武雄市長選挙です。
選挙は新人の元町議(共産推薦)との一騎打ちとなり、樋渡氏が大差をつけて当選しました。

この選挙の有権者数は約4万人で、投票したのは約2万7000人です。
ネットで政治を動かすには、この4万人をターゲットに、情報を届けなくてはいけません。
しかも、すべての人がネットを使っているわけではないのです。
市のホームページをfacebookに全面移行し、市議会をUstream中継するような自治体でも、ネットから影響をあたえることは現実的ではありませんでした。

武雄クラスタで、この結果を予想していた人は多かったのでしょう、大きな動揺や混乱もありませんでした。
それもそのはず、武雄クラスタに参加している人を動かす動機は、樋渡氏を落選させることではありませんでした。
少なくはない時間と費用をかけて、「自分がなぜ武雄クラスタでの活動を続けているだろうか」と考えた時、多くの人の動機はこうではないでしょうか。

  • 現在の地方自治の仕組みでは、首長が暴走した時、それを議会が止められなければ終わり。
  • 武雄市と同じ事が、自分の住む自治体で、いつ起こってもおかしくない。
  • それを防ぐには、自分の自治体をチェックし、議員を動かすことはもちろんだが、元を断つのが一番。

「ただ叩きたいだけ」「既得権益」「共産党だろう」「ネット工作員」「ひろみちゅ一味」などなど、武雄クラスタに対する様々な評価はありましたが、勢いが衰えたり、クラスタ内でのいざこざや内部分裂が起きたりすることは、不思議とありませんでした。

その根底には「自分の住む街を壊したくない」という動機があったからでしょう。
そして「自分の住む街を壊したくない」のは、武雄市民も同じだと分かっていたからでしょう。

続きます

佐賀県知事選とネット選挙(下) 違和感を共有した~ネット選挙の現実 - 高圧☆洗浄機

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