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畳之下新聞

畳の下に敷いてある新聞には、あなたの心を惹きつける言葉が書かれています。

キュレーションメディアのライター必見! 今年あなたに振りかかる2つのリスクと解決策

2017年、あなたがキュレーションメディアのライターを続けているのはなぜですか?
記事が読まれる喜び、つまり承認欲求が満たされることでしょうか。
記事を書くことによって得られる収入でしょうか。
それとも他の何かでしょうか。

今年は、キュレーションメディアにとって厳しいスタートになることは間違いありません。
昨年末から続くキュレーションメディアの諸問題について、著作権者側から見た報道や記事が溢れていますが、ライター目線の情報は乏しいのが現状です。

キュレーションメディアのライターであるあなたに向けて、今年降りかかる可能性があるリスクと、その対処についてお伝えします。


あなたに降りかかるかもしれないリスク

あなたは、他者が著作権を持っている写真や文章など許諾を得ずに使用して、キュレーションメディアの記事を書いて来たライターだとします。
あなたには2つのリスクがあります。

損害賠償請求をされる - いわゆる民事

著作権者が、あなたに対して、写真や文章の使用料や、損害賠償の請求をする可能性があります。
あなたが支払を拒否すれば、支払いを求める訴訟を起こされることになるでしょう。

逮捕・起訴される - いわゆる刑事

著作権者が、あなたを著作権法違反で刑事告訴する可能性があります。
刑事告訴された場合は、警察による家宅捜索や逮捕の可能性があります。
著作権法違反は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、またはその両方が課せられる重罪です。

裁判所に持ち込まれるのは時間の問題


キュレーションメディアのライターが刑事告訴されるなんて聞いたことがないし、こんな事で警察が動くとは思えない

あなたはそう思うかもしれません。

確かに、キュレーションメディアで行われた著作権侵害に対して、損害賠償請求や刑事告訴が行われた事例は多くありませんでした。
これは、著作権者側に多大な手間や費用がかかる事もありますが、判例が少ない事が大きな要因でしょう。

しかし、昨年末からのキュレーションメディアに対する問題は、新聞やテレビで取り上げられるほどの社会問題になっています。
また、キュレーションメディアに自分の著作物が使用された著作権者が、損害賠償請求を行う事例も増えています。

フォトグラファーの有賀正博さん

www.photo-yatra.tokyo

ライターのヨッピーさん

bylines.news.yahoo.co.jp


今年はこの動きが更に加速し、裁判所に持ち込まれるのも時間の問題でしょう。
水面下ではすでに裁判になっているかもしれませんね。

キュレーションメディアはあなたの事を助けてくれない


キュレーションメディアのライターとして記事を書いているんだから、自分が損害賠償をされたり、刑事告訴されるのはおかしいじゃないか。

そんな意見もあるでしょう。

しかし、あなたが著作権者から損害賠償を請求されたり、刑事告訴をされたりしても、キュレーションメディアはあなたを助けてくれません。
それどころか、著作権者に対して積極的に協力することになるでしょう。

その仕組みは、プロバイダ責任制限法 という法律にあります。

インターネットの権利侵害と損害賠償の責任

あなたが、著作権など他人の権利を侵害するような情報を、Webサービスを通じてインターネットに送信したとします。
あなたは送信した当事者なのですから、権利者に対して損害賠償等の責任を負わなくてはいけません。

ここまでは当たり前ですよね。

それだけではなく、あなたに発言の場を提供しているWebサービス運営者も、権利侵害に関わった*1として、一定の責任を負うというのが基本的な考え方です。

では、Webサービス運営者の立場ではどうでしょうか。

自社のWebサービス利用者が、他者の権利を侵害する行為を行っている場合は、発信者同様に権利者から損害賠償請求をされる可能性があるという事になります。
そうなると、利用者が権利侵害をしないように常時監視し、侵害行為を発見したら直ちにやめさせる必要があります。

だからといって、疑わしいものを片っ端から削除してしまうわけにはいきません。
インターネットでの情報発信も、表現の自由で保護されていますから、判断を誤って削除してしまった場合、今度は発信者側から損害賠償請求をされる可能性があるのです。

権利侵害を知らなければ免責されるのがプロバイダ責任制限法

Webサービス運営者は、削除しなくても損害賠償、削除しても損害賠償という、板挟み状態になってしまうわけで、これでは身動きが取れません。

この板挟み状態を救済するためにつくられたのが、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律で、通称プロバイダ責任制限法とよばれます。
ここで言うプロバイダは、特定電気通信役務提供者とよばれるもので、インターネット接続を提供するISP(インターネットサービスプロバイダ)よりも範囲が広く、電子掲示板やSNSなどのWebサービスも対象に含まれます。

プロバイダ責任制限法の第3条には、インターネット上の情報流通において権利侵害があったときでも、一定の条件に当てはまるならば、Webサービス運営者は賠償責任を負わないと定められています。
Webサービス運営者が賠償責任を負うケースもありますが、他社の権利が侵害されていることを知っていた場合と、他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認められる場合、そして、Webサービス運営者自身が権利侵害を行っている場合に限られています。

ざっくりいうと、権利侵害が行われていることをWebサービス運営者が知らなかったのなら賠償責任を負う必要はない というのが、法律に定められているというわけです。

キュレーションメディアのスタンスは

あなたが、あるWebサービスで権利侵害を行った場合、発信者であるあなたとWebサービス運営者の両者が、権利者に対する損害賠償の責任を負うのが基本である。
ただし、権利侵害が行われていたことを知らなかったのなら、Webサービス運営者は責任を負わなくてよいので、その場合は発信者であるあなただけが責任を負うことになる。

この、プロバイダ責任制限法の考え方を踏まえた上で、一連の問題で、キュレーションメディア運営各社が発信しているコメントを見てみましょう。

Spotlight のスタンス

ライターのヨッピーさんの記事の中で、サイバーエージェント社、及びSpotlight編集長である渡辺将基氏から得た回答には「プロバイダ責任制限法の手続きに沿って会員情報を提供する」と記載されています。

それに対してサイバーエージェント社、及びSpotlight編集長である渡辺将基氏が出してきた回答がこれです。

Spotlightは、サービスが定める「利用規約」に基づき、会員が自身の責任で自由に記事を投稿しているCGM型のメディアです。会員はこの利用規約上、著作権侵害をすることを禁じられており、権利者の方に対して権利侵害によって損害を与えた場合、投稿者自身がその責任を負うことが定められております。

和解金のお支払などをご請求されたい場合は、プロバイダ責任制限法の手続きに沿って発信者開示請求の書面をご用意いただければ、当社が保有する会員の情報をご提供することが可能です。以上、ご確認のほどよろしくお願いいたします。

わかりますかこれ。つまり、「届け出をしてくれればライターの個人情報を渡すからライター個人を訴えろ」って事なんですよね。ひどくないですかこれ。何のための編集部なんだっていう話です。

炎上中のDeNAにサイバーエージェント、その根底に流れるモラル無きDNAとは(ヨッピー) - 個人 - Yahoo!ニュース

Spotlightは「会員が自身の責任で自由に記事を投稿しているCGM型のメディア」であって「会員は利用規約著作権侵害が禁止」されており「権利侵害などで損害を与えた場合には投稿者自身がその責任を負う」というスタンスであることがわかります。

NAVERまとめ のスタンス

フォトグラファーの有賀正博さんが、NAVERまとめの運営会社であるLINE株式会社への問い合わせに対し、「プロバイダ責任制限法の手続きに沿って会員情報を提供する」という回答を得ています。
この回答を受けて、有賀正博さんは発信者情報開示の手続きを行いましたが、開示は認められませんでした。

www.photo-yatra.tokyo


また、2016年の年末には、「NAVERまとめ」を運営するLINE株式会社が、プロバイダ責任制限法に沿った対応を行っていることを明らかにしています。

著作権、商標権、名誉毀損などの権利侵害については、他ユーザー参加型サービス同様、監視では侵害の有無を確認することができないため、プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)および同法ガイドラインの定めに沿って対応を行っております。
「NAVERまとめ」に関する昨今の報道を受けての当社見解について | LINE Corporation | ニュース

NAVERまとめ」も、「(運営主体であるLINE株式会社は)権利侵害の有無を確認することができない」というスタンスであることがわかります。

やっぱりキュレーションメディアはあなたを助けてくれない

SpotlightとNAVERまとめを取り上げましたが、他のキュレーションメディアのスタンスもほぼ同じです。
キュレーションメディア各社は「記事は各ライターの責任により投稿されているものであって、記事で権利侵害が行われている事は把握していない」というスタンスで運営していることが見えてきます。
つまり、キュレーションメディアはプロバイダ責任制限法によって責任を問われない立場に、最初から立っているわけです。

キュレーションメディアが、ライターであるあなたを助けてくれないということがわかりましたか?

ライターであるあなたにできることは

もし裁判沙汰になったら、キュレーションメディアは助けてくれないとして、あなたがこれからできることはあるのでしょうか。

もう一度プロバイダ責任制限法の条文を見てみましょう。

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
(損害賠償責任の制限)
第三条  特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。
一  当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。
二  当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。


繰り返しになりますが、権利侵害が行われていることをキュレーションメディア運営会社が知らなかったのなら賠償責任を負う必要はない というのがプロバイダ責任制限法第3条の考え方でしたね。

ということは、権利侵害が行われていることを知っていた/知り得たと判断できる場合や、権利侵害の当事者である場合なら、キュレーションメディアも損害賠償の責任を負うということです。

もし、あなたが行っていた権利侵害行為が、キュレーションメディアからの指示や発注によって行われていたものであるのなら、キュレーションメディアにも賠償責任があるということになります。

今のあなたにできることは、発注ルートや業務フロー、マニュアルなどの証拠を保管しておくことと、その証拠をもとにライター業務の実態を、世の中に示すこと です。

あなたの行動で、キュレーションメディア問題の潮目が大きく変わるかもしれません。

toyokeizai.net

nlab.itmedia.co.jp

それでも躊躇する人へ

とはいえ「今までお世話になってきた訳だし内部告発みたいな事はちょっと」と思うかもしれませんね。
しかし、キュレーションメディア側はすでに動き始めています。

NAVERまとめは、著作権者からライター情報の開示請求があった場合の運用について、2016年12月20日から、LINE社の判断で情報開示する運用に変更しています。

また、発信者本人の同意が得られなかった場合においても、2016年12月20日より、請求者の本人確認に加えて、請求者が著作権者であることや著作権の侵害が事実であること、発信者による著作物の利用を正当化する事実がないことが確認された場合は、情報の開示を行うよう運用を改善しております。
「NAVERまとめ」に関する昨今の報道を受けての当社見解について | LINE Corporation | ニュース

それでも、キュレーションメディアとは戦うのは嫌だって?

では、最後にこれを見てください。
このツイートは、ヨッピーさんの記事に私がつけたコメントです。

私にはどういう意味かはわかりませんが、Spotlight編集長の渡辺将基氏による いいね! がついていますよ。

追記

どういう意味かはわかりませんが、この記事をアップした後に取り消しをされたようで、現在は いいね! がついていません。


NAVERまとめがライターの連絡先を開示(2017年5月 追記)

NAVERまとめを運営するLINEは、フォトグラファー有賀正博さんの求めに応じ、写真を盗用していたライターの連絡先を開示したそうです。
粘り強く交渉してきた有賀さんには尊敬しかありません。

www.photo-yatra.tokyo

写真を盗用していたライターは、使用料(損害賠償)を支払うことになったわけですが、そのやり取りにLINEは関与していないそうです。



やはり、キュレーションメディアは、ライターであるあなたを助けてはくれないのです。



プロバイダ責任制限法著作権侵害も、体系的な知識や実務経験がないと理解するのはなかなか大変です。
しかし、具体的な類型がQ&A形式説明されていて、わかりやすい書籍もあります。

Q&A 名誉毀損の法律実務―実社会とインターネット

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*1:いわゆるカラオケ法理